【第21回】第2章 人体の働きと医薬品 Ⅲ症状からみた主な副作用 肝機能障害・偽アルデステロン症他
副作用は「気づくためのサイン」
登録販売者を目指すみなさまこんばんは。
もうすぐ冬至。冬も極まってきましたね。ドラグストアでは風邪薬をはじめ、カイロや入浴剤、保湿剤などがよく売れています。水分補給をしっかりとして暖かくお過ごしくださいね。
今回は【第2章 人体の働きと医薬品】の中でも、
Ⅲ 症状からみた主な副作用についてまとめていきます。
副作用と聞くと、
「怖い」「できれば避けたいもの」という印象を持つ方も多いかもしれません。
でも実は、副作用は
体からの大切なサインでもあります。
- 今の体調に合っていない
- 用量・用法が合っていない
- 体質的に影響を受けやすい
こうしたことを、症状として教えてくれているのが副作用です。
医薬品は、
正しく使えば、私たちの強い味方になります。
だからこそ、登録販売者試験では
「どんな症状が出たら注意すべきか」を
しっかり理解しておくことが大切です。
この回では、
- 肝機能障害
- 偽アルドステロン症
- 病気などに対する抵抗力の低下
という、試験でもよく問われる副作用を、
仕組みと症状を結びつけながら確認していきましょう。
1.肝機能障害|体の“解毒センター”からのSOS
肝臓は、体に入った医薬品や有害物質を分解・処理する
化学工場・解毒センターのような臓器です。
この肝臓に障害が起こるのが肝機能障害です。
◆ どうして起こるの?(仕組み)
肝機能障害は、原因によって大きく2つに分けられます。
- 中毒性
- 医薬品の有効成分や代謝物が、
肝臓に直接ダメージを与えて起こる
- 医薬品の有効成分や代謝物が、
- アレルギー性
- 医薬品の成分に対する抗原抗体反応によって起こる
なお、承認されていない健康食品やダイエット目的の製品によって、
重篤な肝機能障害が報告されているケースもあります。
◆ 主な症状(試験でよく出るポイント)
初期には自覚症状がほとんどなく、
健康診断の肝機能検査値の悪化で気づくこともあります。
症状が出る場合には、次のようなサインがみられます。
- 全身倦怠感(だるさ)
- 黄疸(おうだん)
- 発熱
- 発疹、皮膚のそう痒感(かゆみ)
- 吐きけ
◆ 黄疸(おうだん)ってなに?
黄疸とは、
ビリルビンという黄色い色素が体内にたまることで起こる状態です。
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 尿の色が濃くなることがある
といった特徴があります。
◆ 「不可逆的」ってどういう意味?
肝機能障害が進行すると、
不可逆的な病変に至ることがあります。
不可逆的とは、
👉 元の状態に戻らないという意味です。
原因となる医薬品を使い続けてしまうと、
肝不全などの重い状態になり、
最悪の場合、生命に関わることもあります。
👉 肝機能障害が疑われたら、
原因と考えられる医薬品の使用を中止し、速やかに医師の診察を受けることが重要です。
2.偽アルドステロン症|むくみと脱力に要注意
偽アルドステロン症は、
体内の水分と電解質のバランスが崩れて起こる副作用です。
◆ なぜ「偽」なの?(仕組み)
この状態では、
- ナトリウムと水が体にたまる
- カリウムが体から失われる
という変化が起こります。
本来、このような状態では
副腎皮質ホルモンのアルドステロンが増えますが、
偽アルドステロン症では
👉 アルドステロンは増えていないのに、
👉 症状だけが似ている
ため、「偽」と呼ばれています。
◆ 主な症状(低カリウム血症+水分貯留)
- 筋肉・神経系
- 手足の脱力
- 筋肉痛
- こむら返り
- しびれ、倦怠感
- 水分貯留・血圧系
- むくみ(浮腫)
- 血圧上昇
- のどの渇き
- 頭痛、吐きけ・嘔吐
進行すると、
筋力低下、歩行困難、起立不能、けいれんなど
重い症状に至ることもあります。
◆ ミオパチーとの関係
低カリウム血症が続くと、
ミオパチー(筋障害)を起こすことがあります。
- 筋肉が壊れやすくなる
- 強い筋力低下や痛みが出る
という点は、試験でも関連づけて押さえておきたいところです。
◆ 原因として重要:甘草(カンゾウ)
偽アルドステロン症で特に重要なのが、
甘草(カンゾウ)を含む医薬品です。
甘草に含まれる
グリチルリチン酸が原因となります。
グリチルリチン酸・甘草の摂取量の目安(試験・実務で重視したい基準)
登録販売者試験や日常のお薬相談で特に意識したいのは、
より安全側に立った注意基準です。
- グリチルリチン酸として:1日40mg程度
- 甘草(カンゾウ)として:1日1g程度
これらの量を超える場合、
偽アルドステロン症のリスクが高まることが知られています。
漢方製剤だけでなく、
- 生薬配合のかぜ薬
- 生薬系の滋養強壮ドリンク
などを併用することで、知らないうちに摂取量が重なる点には注意が必要です。
特に、
- 高齢者
- 体格の小さい方
- 長期間服用している方
では、むくみや脱力、筋肉痛などの初期症状を丁寧に確認することが大切です。
👉 試験対策としても、実務上も、
「40mg・1g」という数値をまず押さえると安心です。
◆ 見逃さないでほしいポイント
- むくみや脱力は初期サイン
- 発症は長期服用後に起こることもある
- 医薬品同士、医薬品と食品の相互作用でも起こる
👉 異変に気づいたら、
原因と考えられる医薬品の使用を中止し、速やかに受診しましょう。
3.病気などに対する抵抗力の低下など|血液成分への影響
医薬品の影響で、
血液中の成分が減少することがあります。
◆ 抵抗力の低下(白血球・好中球の減少)
白血球、特に好中球は、
細菌やウイルスと戦う役割を担っています。
- 医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの抵抗力が弱くなって以下のような症状を引き起こすことがあります。(ステロイド性抗炎症薬や抗がん薬などがそのような易感染性をもたらすことが知られています。)

「易感染性(いかんせんせい)」とは、免疫力や抵抗力が低下し、通常なら感染しないような弱い病原体(日和見病原体)によっても感染症にかかりやすくなっている状態を指します。
主な症状
- 突然の高熱
- 悪寒
- のどの痛み
- 口内炎
- 強い倦怠感
初期は風邪と見分けがつきにくく、
重症化すると命に関わることもあります。
◆ 出血傾向(血小板の減少)
血小板は、
出血時に血を止める重要な役割を担っています。
- 血小板が減少すると血が止まりにくくなる
主な症状
- 鼻血、歯ぐきからの出血
- 皮下出血(紫斑)
- 口腔粘膜の血腫
- 月経過多
👉 出血傾向がみられた場合も、
直ちに使用を中止し、医師の診察を受けることが大切です。
まとめ|副作用に気づけることが、安心につながる
副作用は、決して特別な人だけに起こるものではありません。
- 体調がいつもと違うとき
- 年齢を重ねたとき
- 複数の医薬品を使っているとき
こうした場面では、誰にでも起こり得ます。
だからこそ大切なのは、
「怖がること」ではなく「気づくこと」です。
- 肝機能障害では、だるさや黄疸といったサイン
- 偽アルドステロン症では、むくみや脱力といった変化
- 血液成分の減少では、発熱や出血しやすさ
これらに早く気づき、
原因となる医薬品の使用を中止し、受診につなげることで、
重篤化を防ぐことができます。
医薬品は、
用法・用量を守り、体質や体調に合わせて使えば、心強い味方です。
登録販売者として必要なのは、
「正しく使うこと」と
「異変に気づき、つなぐこと」。
そのための知識として、
今回の内容をぜひ押さえておいてください。
次は、実際の試験ではどのように出題されるのか、
過去問を使って確認していきます。
それではさっそく問題を解いてみましょう!
過去問にチャレンジ!(令和7年度・関西広域連合)
【問77】
医薬品の副作用として現れる偽アルドステロン症に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。
- a 体内にカリウムが貯留し、体から塩分(ナトリウム)と水が失われることによって生じる病態である。
- b 副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していることが特徴である。
- c 主な症状として、手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、喉の渇き、吐きけ・嘔吐等がある。
- d 複数の医薬品や、医薬品と食品との間の相互作用によって起きることがある。
選択肢
🌿 次回予告
副作用には、肝臓やホルモンの働きに影響するものだけでなく、
こころや神経の働きに現れるもの もあります。
たとえば、
「眠くなる」「ぼーっとする」「不安感が強くなる」「興奮しやすくなる」など、
一見すると体調や気分の問題と見分けがつきにくい症状も、
実は医薬品の影響で起こっていることがあります。
次回は、
精神神経系に現れる主な副作用 について、
試験で押さえるべきポイントを整理しながら、
日常生活や服薬指導の場面をイメージしやすい形でまとめていきます。
「いつもと様子が違うかも?」
そんな小さな気づきを大切にできる知識を、
一緒に確認していきましょう!



